メロディのゲシュタルト
聴覚のゲシュタルトを形成する情報処理を群化または体制化といいます。
ピッチの連なりをグルーピング、体制化することがメロディの理解につながります。
ゲシュタルトを形成するピッチパターン
ゲシュタルト知覚は、情報を構成する一つ一つの要素をそのまま知覚するのではなく、ある一定のまとまり(ゲシュタルト)として知覚するという考え方です。
ゲシュタルト知覚の原理のうち音楽でよく言及されるのは、近接(近くにある音を一つのまとまりとして知覚)、類似(質的に同じか似ている音を一つのまとまりとして知覚)、良い連続(自然な流れを作り出す音を一つのまとまりとして知覚)などです。
他に閉合の要因(互いに閉じ合う関係)、経験の要因(しばしば経験するもの)などがあります。
メロディはピッチの変化から感じられますが、人間がメロディとして認識するのは、ピッチの変化を重要性がある情報として解釈する処理によります。
ピッチの群化が不思議な現象を生み出す例では、チャイコフスキーの交響曲第6番『悲愴』の中で見られ、第4楽章冒頭部のファースト・バイオリンとセカンド・バイオリンの演奏から知覚されるメロディです。
両パートは共に広い音域に渡るフレーズで、低音部と高音部が交互に現われます。この演奏を聴いた際の現象として、各パートのフレーズに関わりなく、低音部のメロディと高音部のメロディとに分かれて聞こえるのです。
同じ楽器のバイオリンの音色で演奏されることもあり、音域の近い音同士がグループを形成(群化)しこのような現象が見られるのです。
さらに、メロディの認識にはリズムによる体制化も必要とされ、人間には繰り返される音列を2拍や4拍と言ったまとまりにグルーピングして知覚する傾向があり、このようなリズム感に基づくグルーピングもメロディの認識に役に立つのです。
また、楽譜上の小節線もリズムによるまとまり(拍子の区切り)を示したものですが、音列のまとまりを感じることによって小節を意識することができ、その感覚はメロディの認識をより深めるものとなります。
知覚の現象例
楽譜上の表記
知覚されるメロディ
♪チャイコフスキー交響曲第6番『悲愴』第4楽章
小節線でのまとまり