ストレス反応が害になるのはどのような時?
ストレスは、主として脳の視床下部、脳下垂体、副腎皮質の反応によって起こります。
英語の頭文字Hypothalamus, Pituitary body, Adrenal bodyをとってHPA系といいいます。
ストレス反応が害になる要因
ストレス反応の中心は副腎から分泌される2種類のホルモンであり、それはアドレナリンとグルココルチコイドで、人間のストレスの場合ではコルチゾルあるいはハイドロコルチゾンと呼ばれるものです。
ストレスを感じるのは人間だけではなく、多くの哺乳類でもストレスによってホルモンの変化が生じストレス反応が起こります。
本来ストレスホルモンを分泌するHPA系は、私たちの体を傷つける目的でコルチゾルを分泌するようにできているのではなく、またそのために進化してきたわけでもありません。
体が短期的なストレス状態(食糧危機、怪我等)、あるいは人にとって危険な動物(捕食者)、さらには敵と思えるものと出会った時など、通常の生理的・心理的バランス=ホメオスタシスを崩壊させる状況に対処するために進化してきたのです。
人間がストレッサーに反応すると、その情報は視床を通して視床下部、大脳辺縁系に伝えられ、視床下部からはACTH放出ホルモン(CRH)が分泌されます。
それは脳下垂体に達しACTHが血管内に放出され副腎に達し、グルココルチコイドの放出を準備します。そして数秒内に交感神経はノルアドレナリンを放出し、副腎髄質はアドレナリンを分泌します。
続いて数分内に副腎皮質はグルココルチコイドを放出し、アドレナリンとグルココルチコイドは筋肉のためにエネルギーを動員し、心拍数を高めて酸素がより速く移動できるようにします。また、同時に成長や性行動のような不要不急の活動を停止します。
こうした動きに合わせてプロラクチン、胸腺ホルモン、グルカゴン、ヴァソプレッシンなどのホルモンが、様々な内分泌器官から放出されます。
ストレス反応が害になるのは、コルチゾルなどの副腎皮質ホルモンが必要以上に分泌(分泌亢進)される時です。コルチゾルだけではなく、過剰なステロイドホルモンは様々な障害をもたらします。
コルチゾルはストレスホルモンという別称があるように、ストレスと結びつけられることが多いホルモンですが、本来コルチゾルは悪い要素ばかりではありません。
エネルギーを作り出したり体の炎症を抑えたりと、薬として使われるステロイド剤は多くの病気に対して素晴らしい効果を発揮します。
コルチゾルの役目は、緊急事態に対応するために短期間で体の組織や機能を総動員することであり、事態が収まると正常運転に戻ります。すなわち、体のホメオスタシスが回復することによってストレスが短期間で終われば、体や脳が障害を受けることは殆どないのです。
目先を変えて進化という長い年月で捉えた場合、私たちの祖先はその歴史の殆どを短期的ストレスとの付き合いのみで過ごしてきたのが窺えます。
現代人の場合はそのようにはいかなく、社会の複雑な人間関係あるいは昨今の治安の悪化によって、ストレスの長期化が避けられなくなっているのです。